こんばんわ。くらげです。
VALU優待対談第5回目
さて、VALU優待特別対談第5回目です。今回は石見神楽の舞子である下野貴志さんです。
名前だけは聞いたときがあることが多い石見神楽ですが、実際にはどんなものなんでしょうか?また、神楽がどれだけ地域に馴染んでいるかを語ってもらいました。
なお、この対談はVALUで支援頂いた方なら誰でも申込可能ですので、VALUの購入をご検討いただければ幸いです。
登場人物
くらげ
33歳のただのサラリーマン。本ブログ「世界はことばでできている」運営者。自著2冊あり。聴覚障害と発達障害持ち。なんとか生きてる地味な人。
石見神楽舞子。1973年島根県石見地方生まれ。
物心ついた時から石見神楽に親しみ小学3年生から神楽を始めた。
現在は、美川西神楽保存会に所属し、中学生の息子も一緒に神楽に取り組む。
【石見神楽舞子】×【くらげ】VALU対談「東京から最も隔たれた『神事が根付く土地』で神の子たちはみな踊る」ってお話
ノドグロありがとうございます
〔く〕 こんばんは。くらげです。
〔下〕 こんばんは。石見神楽の舞い手のしもんこと下野と申します。この度はインタビュー記事を作ってただけるということでありがとうございます。
〔く〕 こちらこそVALUをかっていただき、ありがとうございます。しかもノドグロ(アカムツ)の干物まで送っていただけることになりまして…。
〔下〕 島根県石見地方の美味しい魚をぜひ知ってもらいたいんです!ぜひ食べて美味しかったら全国に宣伝してください!
〔く〕 わかりました。微力ですが宣伝させていただきます。到着を楽しみにしております。さて、下野さんは石見神楽の舞子、ということですが、石見神楽とはざっくり言ってなんなのでしょうか?
石見神楽とは?
〔下〕 まず、神楽というのは神社で神に奉納するための踊りですね。いろいろな系統があるのですが、県東部出雲地方の出雲神楽や石見地方で発展した石見神楽があります。石見神楽はかなりエンターテイメント性が高いんです。
〔く〕 ユーチューブで石見神楽の動画を見てみましたが、すごくテンポが早くて派手な印象を受けました。
〔下〕 そうなんですよ。石見神楽は若者が沢山関わっていて、割とバンド活動みたいなノリで、伝統芸能を継続してますね。人口が18万人位の地域に150団体くらいありますし、いまでも若い子を中心に新しい団体が生まれているんです。草野球チームより多い(笑)
〔く〕 比較対象が(笑)いや、ほんとう凄いですね。伝統芸能というと廃れる一方という話ばかりですが全然事情が違いそうです。下野さんは舞子として35年だそうですが、どういう経緯で舞子になったのですか?
〔下〕 子どもの頃から舞子に憧れてましたからね。 気づいたら舞子になってたって感じですかね・・・。 大概の舞子はそうだと思います。
〔く〕 まるでバンドに憧れてたらバンドマンになったような感じですね(笑)それだけ当たり前に地域に根付いているということなんですね。
地元に根付く神事
〔下〕 地元の日本海信用金庫のイメージキャラクターかぐらスターズというんですが、通帳もこのキャラクターでデザインされてます。保育園でも神楽を舞います。
〔く〕 ボクの故郷の山形では芋煮や花笠音頭がアイデンティティになっていますが、まさにそんなかんじですね。
〔下〕 新築祝いの定番は神楽面です。これはうちのですが因みにこのお面はうちの玄関に飾ってあるやつです。
〔く〕 うわ、般若面だ!こわっ!これ悪鬼が逃げてきますけど客も逃げます!
〔下〕 他地域から里帰りした孫が神楽面を怖がりトラウマになるのは石見アルアルですね(笑)
〔く〕 それは当然ですわ。帰りたくなくなりますよ(笑)
〔下〕 あと、石見の慣用句で「舞が舞えん」という言葉があります。人数や予算が足りずに事業やプロジェクトが進まない事をさします。「この金額じゃぁ舞が舞えんわ」って感じに使います。
〔く〕 それはすごい話で、神楽がどれだけ地域経済に根付いているのか、という証拠でもありますね。しかし、派手な衣装ですが、どれほど衣装料がかかるのでしょうか?
次世代につなぐ神事
〔下〕 すごく高いですよ。1着で200万近くするものもあり、年間の公演料はほぼぜんぶ衣裳代に消えるので、みんなタダ働きで頑張っています。
〔く〕 (絶句)そんなに…。
〔下〕 昔は漁師さんがタニマチだったんですよ。競ってお気に入りの社中(神楽を舞う団体)に大金をつぎ込んだそうです。
〔く〕 大漁旗みたいな感じですね(笑)
〔下〕 本当にそれですよ!今はそんな羽振りのいい話はないから自分らで頑張っていますけどね!
〔く〕 となると、日本の漁港の復興と石見神楽の盛り上がりもリンクしてるんですね。でも、下野さんの口ぶりだと悲観的さないですよね、金が大変とか手弁当で伝統芸能の意地ってわりとぐちになりやすいんですが。
〔下〕 ほとんどの社中は自立して頑張っています。やっぱり若い連中が居るから頑張れますよ。
〔く〕 若い子がいると全然違うよなぁ…。全体的には少子化でしょうけど自分の担っているものが次世代につながる希望ってはでかいですよね。ちょっとそういう話をきくと根無し草としてはかなり羨ましくて。ボク自身はわりと昔は伝統芸能とか古いし若者にとって関係ないと思ってたんですね。で、早くに東京に出てずっと根無し草やってるんです。そして30超えると根無し草はこたえてきます。自分のルーツを確認できない寂しさみたいなのはあります。
〔下〕 地元を出た事ないから、そういった事意識したこともなかったなぁ…。
〔く〕 都市部に暮らしてるとなんというか歴史に切り離されて生きてる気がします。そういう意味では神事が地域に根付いているというのはすごくいいなぁと。
〔下〕 でも、外からは知られていないし、評価もされていないので、たくさんの人に石見神楽の素晴らしさを伝えて、若い舞子達が誇りに思うような芸能に育てていきたいんですよね。
神楽はどういう時に舞う?
〔く〕 それはとても素晴らしお考えだと思います。神楽自体はどういう時に舞うんですか?場合によっては一晩中踊るようですが。
〔下〕 10月は毎週のように夜明かしです。若い頃は全く平気だったけど、段々応えてくる(笑)
〔く〕 えー!?年に一回とかの秘儀じゃなくて!?
〔下〕 奉納神楽は各神社の例大祭の前夜祭として行われるんです。各神社は年1回だけど、地域にはたくさんの神社があるから、いろんな地域からお呼びがかかって、奉納しに行く。人気のある社中は何箇所もいくし、そうでない所でも、地元周りの神社数カ所は行くことになります。奉納神楽以外にも通年でイベント出演やら、なんやらかんやらで、うちの社中で年間30公演位。人気のある社中なら50公演くらいはこなしてるかな。
〔く〕 ひぇえ、地域に多数の社中があってそれなんですか!?神社がそんなにあるということでもあるんでしょうけど(笑)しかし、エンタメ性が強いと言ってもしっかり神事なんですよね。
〔下〕 そうですね。私たちの神楽も夜明かしで舞う奉納神楽の最初から数演目までは神様に向けて舞う演目です。鬼も大蛇も登場しません。場を清め神様をお迎えする神楽を舞います。
我々はただ踊るのです
〔く〕 やはりそういう「神様」がいるというのは日本の精神文化の継承的にも素晴らしいことだと思います。日本神道を研究した外国人がいるのですが、神主に「神道は何を祈るのですか?教義は何ですか?」と聞いたそうです。それに対して「我々に教義はありません。ただ踊るのです」と答えたというエピソードを本で呼んだことがあります。この「ただ踊るのです」というところに日本の美が凝縮されている気がしますね。金に余裕ができたらぜひ見に行きたいです!
〔下〕 ありがとうございます!お待ちしております!あと、東京公演などをするときもありますので、その時はぜひいらしてください。
〔く〕 必ず行かせていただきます。最後にVALUでやりたいこと、みたいなものを教えてください。
VALUで石見を活性化!
〔下〕 都市部で石見神楽セミナーやりたいなと思ってます。石見神楽の事知ってもらって、石見に見に来てもらいたい。 バリ島にケチャを観に行くように。石見はなにしろ東京からの時間距離が最も遠いエリアで、石見銀山以外の観光商品あつかっているエージェントは皆無ですから、いまから開拓の市街はある地域だと思います。浜田港のお魚もメジャーにしたいコンテツですけど(笑)
〔く〕 「神事が根付く土地、石見」とかキャッチフレーズが作れそうですね(笑)実際、神事とエンタメが高いレベルで融合しています。
〔下〕 あ、神事とエンタメの融合っていい言葉ですね。本当にそれです。神様とつながり人々とも繋がる。とても素晴らしいものだと思います。
〔く〕 そういう素晴らしい物をぜひこれからも継承していって欲しいですね。頑張ってください!ありがとうございました!
〔下〕 ありがとうざいました!