発達系女子とモラハラ男(鈴木大介)で「障害者を理解する難しさ」を考えた話

「ボクの彼女は発達障害」という本を出して変わったこと

突然であるが、私は2013年に「ボクの彼女は発達障害」という本を出版している。

タイトルの通り、当時は「彼女」であった妻との付き合った経験をできるだけ明るくライトなエッセイにしたものである。当時は発達障害のパートナーの付き合い方と言うとどちらかと言うと「暗いもの」が多かったという記憶があり、その中で「明るい発達障害者本」というジャンルを作ったという面では自分で言うのもなんだが画期的だったと思う。

ありがたいことに続編を作ることができたし、様々な講演会などに呼んで頂いた。現在はあまり表に出る仕事はしていないが、この本を書いたことで自分の人生は随分と変化した。とくに普通に着ていたら絶対に交流が生まれなかったであろうという方々と持てていることが本当に嬉しい。

そのような「普通なら交流が生まれなかったであろう方」の一人が鈴木大介さんだ。

鈴木大介さんは元々ルポライターとして「最貧困女子」と言ったいわゆる社会の見えない問題、言ってしまえば「社会の最底辺」の問題を鋭く切り込んできたライターである。私のような特に何も資格も経験もなく、問題意識を持ちつつもふわふわと Twitter に愚痴を垂れ流すだけの人間にとっては雲の上の存在である。

その鈴木さんであるが、脳梗塞を発症し、その後遺症として高次脳機能障害になってしまった。しかし、それゆえに「発達障害のある妻」の理解が深まり家庭内改革を推し進めていて、夫婦の間の関係性が劇的に改善したという。

この経緯は「されど愛しきお妻様」に書いていて、この本を読んだ直後にとても感動してしまってTwitter のDM にて「自分と妻の生き写しかと思ったし、関係性を見直す上でとても助かった」という感想を送ってしまったところ、ご丁寧に返信があった。

その後も「発達障害のあるパートナーがいる男性」として様々な事について情報交換させていただいた。そのご縁で先日上梓された「発達系女子とモラハラ男」をご献本いただいた。こちらの家庭内の事情が重なってなかなかまとまった時間が取れなかったのだが、どうにか生活も落ち着いてきたのでやっと読了できた。(鈴木さん、ご献本いただいたのに大変申し訳ありません)

 「発達系女子とモラハラ男」を読了した

さて、「発達系女子とモラハラ男」は鈴木さんの「家庭内改革」の奮闘記である。その家庭内改革は前著「されど愛しきお妻様」でもふんだんに描かれていたのだけども、現在は鈴木さんの家庭内改革は「最終段階」まで進んできたと言う。

「発達系女子とモラハラ男」は「されど愛しきお妻様」からさらに進んで、鈴木さんの内面の気づきと変化、お妻様の「セルフケアの目覚め」までの経緯を詳細に描き、更にこれまでの経験を「発達障害系女子のパートナーがいる男性」がより良いパートナーシップを築くために「マニュアル」として体系化した一冊となっている。

パートナーとの関係性は難しい

さて、今回のブログはこの本のレビューを書こうと思ったのだけど、あまりにも言いたいことが多すぎるのでどうしたものかと悩んでいる。というものも、ほとんどの項目に渡って我が家の生き写しのようで「本当にそうだよね」と頭がもげるほど頷きながら読んだくらいに共感できるところがあって、全てに言及したらそれ自体で一冊の本になってしまいそうだからだ。

色々考えてみると、この本の一つ大きな軸になるのは「パートナーシップとは何だ」ということである。夫婦というのは当然ながらパートナーシップの最も単純かつ強いものなのだけど、そこにはいろんな力学が働いていて「愛する男女の組み合わせ」という単純なものにはならない。ましてやそこに「障害」や「病気」といった問題が絡むとまるで三体問題のように解決が難しくなる。また、「ジェンダーロール」のような「役割」がパートナーシップよりも先に来てしまうこともあって、「男性はかくあるべし」「女性はこうしなければいけない」といった思い込みで関係性が硬直することも少なくはない。

鈴木さんも高次脳機能障害を患う前は妻に対して様々な不安を抱いていた不満を抱いていたと書いているが、その不満は「妻の発達障害を本当に意味で理解していなかったからだ」と述べている。高次脳機能障害になってどれだけ「脳が壊れた」状態で生きていくのが大変かということを自分の経験から理解することができたからだ。その理解が妻と一緒に家庭を改革していくというモチベーションになっている。

健常者は障害者を理解できるのか

私は ADHD・聴覚障害でもあるので、妻の障害に対してもある程度理解はある方だと思う。というか、自分の経験から障害というのはどれだけ恐ろしいものかを理解しているので、「妻も同じように大変なんだろうな」というのは理解に難くないのだ。「ボクの彼女は発達障害」もそのような立場から書いている。

鈴木さんはこの本で度々妻に「障害を理解してやれなくてすまなかった」と書いているけども、「普通の人」はどうしても「障害を負う」ということがどれだけ大変なのかも分からないし、「健常者の状態が普通であること」に疑問を抱くことは難しいのだろう。

それはもうどうしようもないことだと思うし、「自分で経験したこと」でなければわからないことというのは障害に限らずいくらでもあることだ。だから、自分が病気になって初めて妻を理解できたと言う鈴木さんが愚かだとは全く思わない。むしろ、後天的に障害を負うことでそこまで深く発達障害を理解できるのかと、驚くばかりである。胸を張って「自分の妻を理解している」と威張って欲しいくらいだ。

「妻の布ナプキンを洗濯すること」

さて、この本の中で一番印象が深かったのは妻のPMSに関することだ。

PMSとは生理に伴って心身の不調が来ることだけど、うちの妻も生理が来ると動けなくなることもしばしだし、精神的に落ち込んでよくわからない行動をとることも多い。それ自体はそういうもんだと思うしかないんだけど、毎月のように辛い思いをする妻は不憫だし、できるなら代わってやりたいと思う。

この問題に関しても、鈴木さんは高次脳機能障害になる前は「生理の辛さを本当の意味で理解しことはできなかった」と言っている。どこかでやっぱり「生理でもできることはあるでしょう」とか「生理がくるたびにそんなに自分に攻撃してくるな」という不満を持っていた。でも、高次脳機能障害を「どうしようもないことがたくさんある」ということに気付いたとき、PMSに関する理解も深まったそうだ。

すごいのはここからでそこで、妻の布ナプキンを手洗いするようになった。私も妻が急に生理が来てナプキンが足りなくなり、薬局に買いに行ったりすることもあるんだけど、それだけでも大変恥ずかしいと言うか、心理的な抵抗が強い。ましてや、本当に血まみれの布ナプキンをじゃぶじゃぶ洗うことは、ちょっと想像できないだけど、そういう経験を通じて妻を理解しようとする鈴木さんの態度には感動すら覚えてしまう。(そんな鈴木さんは妻からはキモいと言われているようだが自分も妻から同じようなことを言われているので他人事ではない)

健常者は障害者を理解できるのか

人が人を理解するのはそれほど楽なことではない。中には、頭の中の想像だけでは絶対理解できないこともある。鈴木さんが高次脳機能障害になったのは、ある意味幸運であって、誰もが発達障害のある人を理解できる立場になるわけでもない。もちろん、我が家でも問題が日々立ち会われているだけども、「障害があるということがどういうことか」ということをお互いある程度は理解しているので、問題をすり合わせることは普通の人よりも楽をしていると思う。

だからといって、普通の人が障害者を理解できないというわけでもない。人を思いやる心も大事だし、自分の持っている「できないこと」をもっと深掘りして、「障害を持つこと」とリンクさせるということもできるのではないだろうか。

「できないこと」に焦点をあてられてしまうこと

障害を持つ人であっても、できることもあればできないこともある。しかし、「障害がある」ということは、「できないこと」に焦点が当てられてしまうことでもある。詳しくは本を読んでほしいのだけど、鈴木さんは妻の「できることとできないこと」を細かく切り分けて、「できることをやってもらう」という方法で家庭内の仕事の負担を劇的に軽減することができた。

我が家も「できること・できないこと」はある程度は切り分けてできる。私ができないことは妻に行ってもらうし、妻ができないことは私がやる。両方ができないことは、外部からためらいなく助けてもらう手はずを整える。そのような生活をしている。

障害の有無に関係なく読んでほしい

人は一人で全部できるわけでもなければ、何もできないわけではない。だけども、相手に「できること」を期待し過ぎることはままあることで、それがお互いのすれ違いを生むことも少なくないだろう。そのようなギャップを少しでも埋めるために、発達障害の有無に関係なく、パートナーがいる人全員に読んでもらいたいなと思う本であった。

我が家もいろいろあって、ちょっと関係性がこじれてるところもあるので、この本を参考に妻と生活を見直したいなと思っている。本当にこの本を書いてくれて、ありがとうございました。

鈴木さんとは新型のコロナウイルスの影響もあって、一度もお会いしてきたことがないのだけど、そのうち4人で話し合うことができたらいいなと思っている。その際はよろしくお願いいたします。

このくらいで

さて、本日はこのぐらいで。皆さま、家庭の家庭の問題を見つめ直しつつ頑張っていきましょう。では。

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