こんばんわ。寒さで体にきしみが出ているくらげです。若くないですねぇ。もう。
さて、元旦からこっち、相模原障害者殺傷事件について何度か書いています。
今回はこの事件絡みでちょっと見過ごせない言説があったので、メモがてらにブログ記事を。
相模原障害者殺傷事件が発生した「津久井やまゆり園」は神奈川県の方針で建て替えることになりました。
先日、関係団体・有識者ヒアリングを行ったところ、障害者当事者団体等からは障害者福祉の地域移行が国の方針であるとし、建て替えよりも地域移行支援やグループホームの整備をする必要があると異論が相次ぎました。
一方、県は「凄惨なイメージを払拭し、再生のシンボルとする」とし、現状とほぼ同規模の施設を立て直す方針を崩していません。
この問題は予算や地域の受け入れ体制などが絡むので、一概に「大型施設の建て替えが悪い」という気はありません。しかしながら、黒岩神奈川県知事の発言があまりにひどく、この建て替えについて県がどれだけ「利用者のこと」を理解しているのか、と疑問を持ちました。
さらに、入所者本人の意向確認について「事故直後に入所者に接し、現実を見た時、意思を確認するのは非常に難しい作業だと痛感せざるを得なかった」と述べ、「本人の意向を一番受けている家族から意見を聞くのが次善の策」との認識を表明した。
その上で、意思の再確認について「現時点では考えていない」とし、「まさか入所者は(家族と)違うことを考えていて、家族は全く違うことを言っているとは思いたくない」と述べた。
黒岩知事、異議に「心外」 やまゆり園建て替え構想で (カナロコ by 神奈川新聞) – Yahoo!ニュース
ちょっと何言ってるかわかんないですね。
何がおかしいのかは聡明な読者皆様におきましてはすぐにお気づきでしょうが、「障害者当事者の意見」はどこにいった、おい、って話ですね。他の報道を見ても、当事者から聴きとったことを反映はしていないようです。
その上で、事件直後に園職員や入所者家族らから聞き取った結果、現場の悲惨な状況から現施設を活用し続けることは困難と判断したと説明。「緊急事態を早く修復しなければならない。切実な思いを受け止め、早く進めるべきだと決断した。建て替え判断そのものが間違っているのでは、と言われることは非常に心外だ」と述べた。
東京新聞:やまゆり園建て替え 異論噴出に知事「非常に心外」:神奈川(TOKYO Web)
確かに重度知的障害者との意思疎通やこのような問題を話し合うのは難しい。
しかし、この施設の入所者たる障害者自身がこの決定に関われないことは、断じて人権上、許容できるものではない。
何が問題なのかについては、DPI(障害者インターナショナル)日本会議の尾上浩二副議長の声明がわかりやすいので引用。
建て替え方針を決定した県の検討過程の中で意見を聞かれたのは、入所者の家族会と施設を運営する指定管理法人だけでした。障害者の場合は特に、本人と家族の意見は必ずしも一緒ではなく、利益相反になる場合さえあります。それは障害者と施設側についても同じです。
家族や施設の意見を切り捨てろと言っているのではありません。それぞれ違う意見があるということを前提に、各意見を聞かなければなりません。
この分野で有名なスローガンがあります。「私たちのことを、私たち抜きに決めないで(Nothing About Us Without Us)」
障害者本人の意見を聞かず、例えば家族や専門家が良かれと思ってやってきたことが、結果として障害者を社会から隔離、分離してきた歴史があります。
その反省から、第一の当事者である障害者を中心に据えるべきだというのが、日本も批准している障害者権利条約なのです。県は拙速な判断をやめ、じっくりといろいろな立場の人に意見を聞いてほしい。とりわけ障害当事者の意見を丁寧に聞くべきです。
尾上氏は黒岩県知事の見解を見事に否定しています。
これは尾上氏の勝手な見解ではなく、現在の障害者福祉の目指す方針として掲げられ、日本も批准している「国連障害者権利条約」にも障害者の自己決定の尊重が明記されています。そういう国際的な流れの中で黒岩県知事の認識はあまりに古いものです。
この見解に対して、ボクはツイッターでこのように述べました。
まぁ、まとめちゃうと「障害者の事を人間として扱ってんの?」ということです。意思決定ができないって、それ、例の容疑者と同じ立ち位置じゃないの、ということであり。
まぁ、「意見を整理して、どう具体的に反映するか、しっかり受け止めて前向きな形を出していきたい」ということでもありますので、是非、神奈川県にはおかれましては、障害者権利条約を熟読の上、再考いただければと存じます。
これ以上書くと罵倒が出てしまうので、尾上氏の言葉で〆させていただきます。
事件を受けて県が定めた共生憲章には、「誰もがその人らしく暮らせる地域社会を実現します」とあります。単なるうたい文句でなく、この憲章に沿った形で同園再生の基本構想をつくるべきです。
今日はこれくらいで。では。
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