トランプ大統領就任式に手話通訳者はいなかったのか?を調べてみたお話

こんばんわ。くらげです。

トランプ大統領就任演説で差別が?

手話通訳者がいなかった?

ツイッターで「トランプ大統領就任式で手話通訳がいなかった。衝撃だ」という趣旨のツイートがRTされています。

手話通訳はいたらしい?

しかし、調べてみると就任式ではテレビには映らなかったが少なくとも一箇所以上に配置されていたという投稿もありました。

ワシントンD.Cにいる友人によれば、通訳者はいます。でも、カメラに映るところにはいません。彼らは様々な場所にいます。

また、以下のようなツイートも。

「大統領就任式に手話通訳者がいなかった。ADA法(障害を持つアメリカ人法)違反ではないか?」

「私の友人の手話通訳者のエミリーは就任式で働いていました。どこにいたかは正確には分からない」

「手話通訳はオレンジセクションで行われていました。しかし、障害者が集まっていたレッドセクションにはいなかった」

手話通訳者が不十分だった

あと、上のツイートのリプライを見てると「情報保障そのものがなかった」と勘違いして騒いでいる人もいるようですが、字幕がついているテレビジョンはあったんですね。それは問題提起しているredditの投稿からしてわかります。

手話通訳者が就任式にいなかった

私は就任式に手話通訳者がいないことに注目している。手話通訳者は大型ビジョンに映ることもなく、障害者セクションに立っていることも見ることができない。

これは明確な障害を持つアメリカ人法違反である。

追記:障害者席はブルーゾーンとレッドゾーンがあった。ギャローデット大学(アメリカのろう者の大学)に50席分のレッドゾーンの座席チケットが配られたが、手話通訳があるのはブルー席だった。

字幕はあったが、これは英語力の不十分な学生のための言語への平等なアクセスではない。

手話通訳は会場にいましたし、字幕の同時通訳を行うテレビジョンも設置されていました。しかし、「情報保障が充分だったか」というとそうではないんですね。

平等な情報のアクセス権が保障されていなかった

何が問題なのか

ここはもう日本と意識が全然違っていて、文字通りの意味でどこでも同じ情報のアクセス権の整備がADA法で求められているわけです。

で、今回はブルーゾーンにいた障害者とレッドゾーンにいた障害者では情報のアクセス方法が違います。特に今回は、アメリカのろう者の大学たるギャローデット大学の学生を案内したところに手話通訳者がいなかった。これは大きな問題です。

「字幕が付いているじゃないか」と考える方も多いと思いますが、「英語」と「アメリカ手話」は全く別なものなのです。(日本語と日本手話の関係もそうです)

ろう者とは

この場合のろう者とは「第一言語がアメリカ手話」の聴覚障害者でして、手話が母語の方々ですね。つまり、手話で考え、手話で話す文化を持つんです。ですから、英語をそのまま字幕にしても意味がよくわからないことがある。文字通り手話に「翻訳」することが「言語へのアクセス権」を保障することになるんです。

この辺の背景を理解していないと「単なるわがまま」と言われそうですが、「充分な手話通訳者がついていなかった」ことは情報の平等の観点からは充分な抗議理由になるんですね。とはいえ、「手話通訳がつかなかった」ということに対してイコールで「トランプはろう者を閉め出した」「優生学思想だ」ということにはなりません。

トランプに対する冷静な批判を

オバマ大統領就任式でも大型ビジョンに手話通訳の姿は映りませんでしたし、会場でもどこに手話通訳者がいるかはわからなかったそうです。「ろう者に対してアメリカの姿勢が明らかに後退した」という証拠は(今のところ)明らかではないわけですよ。(もしかしたらボクが知らないだけかもしれませんが)

トランプが選挙運動中に障害のある記者を嘲笑するような真似したり、女性に対する差別発言を繰り返したりとヘイトを繰り返したのは絶対に許せませんし、すでにホワイトハウスのホームページからLGBTの権利に関する記述が削除されています。

それでも「間違いや誇張」を元にトランプ批判を展開するのはトランプを批判するからこそ慎みたいと思います。それこそトランプを当選させた「post-truth(ポスト真実)」に加担することだからです。

というわけで、いろいろ調べていたら長くなりましたが、皆様「わかりやすい悪」には気をつけましょう、ということで。では。

※文中の英訳が間違えていたら教えて下さい

追記 2017/01/25

ろう文化について更に深く考察しました。こちらも合わせてお読みいただけると理解が深まります。

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