トランプ手話通訳者排除の誤報から考える手話は言語だよというお話

こんばんわ。くらげです。

ろう者とはだれか

はてブに乗りました

先日書いたトランプ大統領手話通訳の誤報の記事がはてなブックマークの人気記事に取り上げられまして、様々な反響をいただきました。皆様ありがとうございます。はてブの人って意外と優しい。

こんばんわ。くらげです。 トランプ大統領就任演説で差別が? 手話通訳者がいなかった? ツイッターで「トランプ大統領就任式で手話通訳がい...

その中で、「ろう者」という存在を初めて知った、というコメントやツイートもありました。「手話で考え、手話で話す人」をろう者と書いたところ、「そんな人たちがいるのか」という驚きがあったようです。

ろうとは

「ろう」とは医学的な区分では「100db以上の最重度難聴難聴者」のことを指します。こっちの意味ではボクもろうです。

しかし、文化的な面からの「ろう者」とは手話を話し、ろう者としての自覚がある方を指すことが多い。つまりはアイデンティティとして「ろう者」なのかどうか、ということですね。そういう意味ではボクはろう者ではなく聴覚障害者です。手話がメインの言語じゃないし、ろう文化に属しているわけでもないからです。

手話は言語

ここでかなり理解が難しいと思われるのが、「手話は言語」ということ。ボクは日本手話にはうといので詳しくは語れないのですが、日本手話は「日本語」をベースにしていません。独自の文法や語彙があります。ですので、言語学上は日本手話と日本語は別物なんですよ。方言とも違って、独立した言語なんです。

なお、アメリカ手話(ASL)、イギリス手話(BSL)、フランス手話(FSL)なども同様に英語、フランス語とは系統の違う言語です。

よく、「手話は国際共通なの?」と聞かれますが、こういう観点からも違うんですね。しかし、それとはまたべつに国際手話というものもあり、ろう者の国際会議やデフリンピックではこちらを使うことが多いです。

手話通訳と筆談の違い

ともあれ、我々が日本語で考えて日本語を喋るように、ろう者は手話で考え手話を喋ります。母語だからです。ですから、ろう者に「手話通訳がなければ要約筆記で良いじゃないか」というのは自然ではないわけです。ベースになる言語が違いますから。

「音声日本語→手話」というのと「音声日本語→書記日本語→手話で考える」というのでは段階が違うのは明らかかと。ここからしても「手話」と「要約筆記」では役割が違う、というのも理解できると思います。

再びトランプ問題

ギャローデット大学とは

で、今回のトランプ通訳問題の発端はギャローデット大学の学生が手話通訳者のいない席に案内されたことです。(ボクが理解する限りでは、ですが)

ギャローデット大学はアメリカのろう者の大学で、「公用語」が手話です。入学試験にASL(アメリカ手話)があり、手話が出来ない学生は入学できません。アメリカろうコミュニティの中核とも言えます。そりゃ、問題視されて当然だよな、ということですね。

なので、「情報保障があったから差別ではない」というわけではないんですよ。母語を保障されなかったからショックなわけです。

誰のミスなのか

ですが、これはトランプ直々の指示、というわけではなく、スタッフ側のミスだとボクは思います。トランプ大統領は直接指示をするほど「気配り」はしないだろうし、そういう政策を公開しているわけではない。こっそりそういうことは「出来ない」人なんじゃないかなぁ、と。

というわけで、「手話通訳が会場にいた」というのは間違いなくとも、ろう者にとっては手話通訳を受けられなかったのが大問題だった、というの同時に成り立つわけです。

まとめ

ただ、この問題を理解するためには、このような背景があることを知らないとよくわからないわけでして、「正確に伝えるって難しいなぁ」と改めて思う次第。

ちょっとでも「ああ、変な人が変なことを言っているんじゃなくてこういう背景があるんだ」と理解ていただしていただけるとありがたいです。

では、今日はこれくらいで。

なお、ボクはたまに手話で寝言をするそうです。どんなんだよ。

くらげ

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