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省庁による雇用障害者数水増しのオトシマエは障害者の新規雇用3500人?ってお話

こんばんは。くらげです。

吹っ飛んだニュース

お昼休みにご飯を食べながらヤフーリアルタイム検索を見ていたら「障害者雇用」がトレンドに上がっていました。

平成28年に改正障害者雇用促進法が施行され、今年から精神障害者が障害者雇用の範疇に入ったり、障害者法定雇用率が引き上げられたり、と大きな変化が起きています。

それに伴い、各地でトラブルが起きているのでそのたぐいかな、また障害者叩きなのかな、と嫌な予感がしましたが、気にはなるので詳細を見たところ「官公庁が障害者雇用者数を水増ししていた」というとんでもないニュースを目にしました。(参考資料参照)

省庁が障害者雇用を水増ししていたヤバさ

日本では障害者雇用促進法により国・自治体や一定数以上の規模の企業は業種などにより決められた割合の障害者を雇用する義務が生じます。これを障害者法定雇用率と呼んでいます。

現在、一般企業の障害者法定雇用率は2.2%。国や地方自治体などの行政機関では2.5%と、企業より高く設定されています。厚生労働省が発表している障害者雇用状況の統計では、ほぼすべての省庁が法定雇用率を達成していました。

一方で法定雇用率を満たしている企業は5割にとどまり、それと比較すると官公庁の達成率は大変高いものとなっています。私も雇用統計調査を読んで、「官公庁は熱心に障害者雇用に取り組んでいる」というイメージを持っていました。

しかし、官公庁が障害者雇用を算出する際に、「障害者手帳を持たない職員を障害者とカウントして報告していた」という不正が発覚したことで、この前提が崩壊しました。

不正の詳細については報道機関によって内容が微妙に違うのですが、障害者雇用義務化が始まってから42年間、多くの官公庁が雇用数の水増しを行っていたのは事実のようです。素で「アリエンワー」と口から魂抜けています。

どのくらいの規模の水増しなのか

この不正は当然あってはならないことなのですが、はたしてどれほどの規模なのでしょうか? 詳細を厚生労働省が調査し、とりまとめて発表するということですが、気になったので報道を元に計算したところ、水増しされた人数は1,700~3,500人の間くらいでは、という試算が出ました。

これから計算すると官公庁は全体として障害者雇用率を達成しておらず、実際に雇用している障害者の数は本来雇用しなければいけない人数より1,200~3,000人も少ない、ということになります。これは日本で雇用されている障害者の0.3~0.5%にあたり、割とシャレになっていない数字です。統計上、障害を持った労働者が一瞬でこれだけ消えたということになります。

また、法定雇用率を守れていない企業は不足している障害者数一人当たり5万円の納付金を納めなければいけません。いわばペナルティです。それをこの問題に当てはめると、年間で約7億2,000万円~18億円程度の納付金が発生することになり、国はこれだけの額の納付金を払う義務を免れていたといえます(法律上、給付金を払うのは企業だけのようですが)。

オトシマエはどうなるのか?

まぁ、これはあくまでも雑な試算であり、問題の規模をさっくりイメージするために算出した数字にすぎません。なので、今後の厚労省による調査結果の発表次第で全く規模が変わる、ということはご承知ください。

とはいえ、今の報道が正しいなら少なくとも数百人単位の水増しが行われており、問題が発覚した官公庁では、かなりの数の障害者を新たに雇用しなければ障害者雇用率を満たせない状態です。

これ、どうすればオトシマエつくんだ……と他人ごとながら青ざめる他ないのですが、とりあえず障害者雇用義務を満たす必要が生じるとなると、いきなり数百人オーダーの「働ける障害者」の需要が発生します。

ところが、現在の障害者の就労・転職業界は完全に売り手市場で、官公庁が求めるような「事務作業のスキルがあってフルタイム働けるような体力があり、軽度の障害で手帳を持っている」という障害者は、ほとんどが民間企業に良い条件で就職していると考えてよいでしょう。

そうなると、いくら官公庁が障害者雇用の求人を出したとしても、よほどの秘策がない限りまともに人が集まらないと思うんですが、どうするんでねしょうねこれ。

何かの変化になるかしら?

まぁ、この不正は法律の制定以来42年間積み重なったものであり、大きな膿がまた一つ表ざたになったのだと喜んでいいことかもしれません。願わくば官公庁における障害者の働き方が大きく変わってほしいですね。

先ほど書きましたが、求人市場では「優秀な働ける障害者」は既に枯渇しています。そうなると一般的な意味では「働けない障害者」をターゲットにしないと、数百人オーダーの穴は埋められないでしょう。

一方で、国が障害者雇用義務に違反している状態が長く続けば、民間企業や障碍者からの批判の声はますます強まっていきます。板挟みです。もう各省庁が工夫して「優秀でない障害者」を活用する働き方をする必要があるんじゃないですかね、というのが今の私の考えです。というか、そうなれ。

まぁ、ほんとどうなるんでしょうね、下手したら障害者雇用全体に大きな影響を及ぼすので、丹念にチェックしていきます。

踏ん張りましょう

では、今日はこれくらいで。皆様、法律は良くチェックして違反しないように気を付けて踏ん張りましょう。では。

【参考】数字の計算方法

国の行政機関における水増しされた障害者数試算(H29)

元データ:平成29年 障害者雇用状況の集計結果

(1 ) 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数
275,449人

(2) (1)から算出される雇用障害者数(2.3%)
6,335人

(3) 国の行政機関における雇用障害者の数
6,867.5人

(4) 実際の雇用障害者の数(超おおざっぱ)
半数の省庁で半分(25%) 約5,150人(約1,700人水増し)
全省庁で半数以下(50%) 約3,400人(約3,500人水増し)

(5) 不足している雇用障害者数 ( (2) – (4) )
約1,200人~約3,000人

(6) 障害者雇用納付金を払ったとしたら(一人当たり月5万円として年間の額)
約7億2000万円~約18億円

(7) 42年間の累計
約302億~774億円

(8) 日本の雇用障害者数
約56万人

(9) 今回の件で影響を受ける雇用障碍者数の割合 ((5)/(8)*100) (%)
約 0.2% ~ 約 0.5%

【参考資料】

平成29年 障害者雇用状況の集計結果

雇用する上でのルール

障害者雇用省庁水増し 義務化当初から42年

国の雇用実態は公表している人数の半数を下回る可能性がある。

障害者雇用を水増しか 複数省庁、法定雇用率下回る恐れ

障害者手帳を持っているか確認しておらず、雇用数が法定の目標を下回っている恐れがある。

障害者雇用、省庁水増し 義務化当初から42年間

だが国交省や総務省など十近い主要省庁で、手帳交付に至らない比較的障害の程度が軽い職員などを合算することが常態化していた。拘束時間の長さや国会対応など突発的な仕事が多い特性から採用が進まなかったのが理由とみられる。対象外の人数を除くと、実際の雇用率が1%未満になる省庁が多いとみられる。
くらげ

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