「押しかけ」×「アスペルガー」な漫画「アスペル・カノジョ」はリアリティしかない!ってお話

書評

誰の許可をとってそんな漫画を出してるんだ!

ふとタイムラインを眺めていたら、一瞬「アスペル・カノジョ」という単語が目に入った。

ん?と思って、マウススクロールする手を止めて、TLをさかのぼる。フォロワーさんがブックメーターに「アスペル・カノジョ」という漫画を登録したという自動通知だった。思わず「ほぅ?」と唸った。

私は「ボクの彼女は発達障害」という本を書いており「発達障害×カップル物」の第一人者だと自認している。

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こんなドストレートに発達障害×カップル物の本が2巻も出ているとは。私に挨拶なしでこの分野にズカズカ入ってきて島を荒らすとはいい度胸だな!と「アスペル・カノジョ」について調べ始めた。どうせタイトルだけで中身は適当な萌えまんg・・・。と思った一時間後、2巻まで読み終えた私は泣いていた。

変人×聖人

「アスペル・ガール」のあらすじは「新聞配達のアルバイトとエロ同人誌で生計を立てつつほとんど誰も読まないオリジナル漫画を書いている青年=横井さん」のもとに「オリジナル漫画のファンだ」という「謎の美少女=斎藤さん」が押しかけてくるという「よくある押しかけもの」で、私は鼻で笑うジャンルだ。

しかし、とにかく斎藤さんは変だ。ショートカットで男なのか女なのかわからない顔立ちと服装。人をじーっと凝視してくる。幸せだからと手首を切る。犬がよってきたら蹴飛ばす。ほぼ初対面の人にスキンシップをしてくる・・・と、アスペルガーの特性をほぼ兼ね備えているんじゃないか、というくらいに「わかりやすい」キャラだ。

斎藤さん。めっちゃ見てくる人。

一方で横井さんはというと、よくわからないまま斎藤さんをアパートに泊め、いきなり泣き出したり発作を起こしたりする彼女に戸惑いながらなし崩しに同棲(?)してしまう度胸のある人物である。同時に、奇行を繰り返す斎藤さんへの対応が「完璧」といっていいほどに的確である。

生きにくさを抱えた聖人っぽい横井さん

異常なリアリティ

勘のいい「ボクかの」の読者にはおわかりかと思うが、ここだけ抜き出せば、かなりの割合で私と妻のあおのキャラクターだ。1ページ1ページ、「どこのうちらだよ!」と驚きながらページをスワイプしていた。同時に、胸に迫る何かを強烈に感じた。

この漫画の感想を読むと「心揺さぶられるが評価に困る」というものが多かった。「こんな変なやつがいるわけない」というのと異様なリアリティが混じっているからこのような混乱が起きるのではないだろうか。

だが、私からすれば「アスペル・カノジョ」はとてもリアルだ。手首を切ることも、子供を絶対に作りたくないところも、すでに経験している。ボクの彼女は発達障害は「明るい」発達障害本を目指した。故に書けないこと、書くべきではないこともある。

起きたら手首切ってるのありましたね(遠い目)

だが、それを軽々と超越して息づかいを感じるような生々しさで描かれたこの作品は「私が描けなかった苦悩」を世に問うている。そのことに畏怖と感動を感じたのである。一度、この漫画の作家とじっくり話し合ってみたいと思った。

普通に面白い

まぁ、それ以前に漫画として普通におもしろい。特に1巻も2巻も巻末漫画は肩の力を抜いたクスリと笑えるものだし、恋愛ものとしても普通にエモい。私の感想はさておいて、気楽に読んでほしい漫画である。

こちらで一部無料で読むことも出来ますので、是非に。

アスペル・カノジョ - 萩本創八/森田蓮次 / 第38話 買っちまいましょう(前編) | コミックDAYS
新聞配達で生計を立てている同人作家・横井の家へ鳥取から突然やってきたのは、「ファンだ」という斉藤さん。彼女は見ているもの・感じている事・考えやこだわりが、他の人と違っていて……。「生きにくい」ふたりが居場所を探す、ふたり暮らし物語。

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